西陣織に使われる引箔技術を受け継ぐ

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創業大正13年より京都西陣の地に引箔専門店の西村商店はあります。西陣織を輝かせてきた引箔を通じて感じる伝統工芸への想いや当たり前に行われている環境配慮の営みを引箔職人でもある西村商店:西村さんに教えていただきました。

RiFUKURU staff:まずは引箔について教えてください。

西村さん:引箔とは、西陣織に使用する資材のことです。引箔の作り方は、私たちがまずは、色漆などで金箔など引箔のベースを和紙にコーティングします。さらに出来上がる帯柄のイメージに合わせて、様々な手法で一枚の絵のように引箔をデザインしていきます。

出来た引箔を切屋さんがおよそ0.3mmにカットし、糸状にしていきます。さらにそれを織の職人さんが織り機に1本ずつひっかけ、引き込みながら織り上げていきます。その様子から、引箔と呼ばれるようになりました。

引箔の魅力は糸やプリントでは出せない微妙な色合い、グラデーションのムラ感が出せる事です。

帯柄のイメージに合わせた引箔のデザイン
左:引箔・右:帯柄(スマホ画像)

RiFUKURU staff:最近、始められた引箔の新たな取組について教えてください。

西村さん:西陣織以外に引箔の技術を転用できるのではないかと思い、表具や木材、ガラス製品ボードに施したりしました。そんな取り組みを行っていたら、少しずつ異分野の企業様からお声をかけていただくことが増えました。例えば、香港の会社のスピーカーのデザインやホテルの内装、お酒のラベルにも採用されました。最近はタンブラーやコースターに引箔の装飾をしたオリジナル商品を製作し、販売しています。このように幅広い素材に使用できますので、引箔の可能性が広がってきているなと感じています。

引箔の装飾を施した真空断熱タンブラー
木材に引箔デザインを入れたコースター

RiFUKURU staff:引箔を製作する時には環境にも配慮されているとお聞きしています。具体的にどのようなことに心がけておられますか?

西村さん:街中に工房がありますので、ご近所に迷惑が掛からないように水上換気扇の使用を徹底しています。水上換気扇は大掛かりな装置なので、設置が難しいですが、油性塗料、箔をなるべく外に出さないようにするため、使用しています。また、水は建物の中で循環させているので、外に流していません。3ヵ月に一度掃除をするときには濾過して水をキレイにしています。濾過された廃棄物は下水としてそのまま流すのではなく、乾かして産業廃棄物にして廃棄しています。
製造する過程においてはほぼ廃棄するものが出ません。引箔の端は、「しれ」と言い、本来は捨てる部分かもしれませんが、それを引箔をまとめる材料として使ったり、こよりのようにまとめて、色をつける道具に使ったりしています。コーティング剤も流用できるので、捨てる事もありません。商品化したコースターは引箔の残材を使用して作っています。
そして、コンプレッサーや表面を乾かすときに機械を使う以外、手作りの道具で製作しているので、ほぼ電気を使いません。そのため、製作工程において二酸化炭素の排出はほぼありません。

工房内に設置されている水上換気扇

RiFUKURU staff:今回は、お忙しい中、快く工房の見学や取材に応じていただき、ありがとうございました。

取材を通して、伝統工芸品は職人さんの様々な工夫で成り立っており、元々、廃棄が少なく、環境に配慮されて作業を進められていることを工房を見学しながら感じることができました。それらの行為は昔から自然に意識せず行われています。そういえば、昨年、お伺いした手描き友禅の職人さんも同じようなことをおっしゃられたのを思い出し、ここにも次世代につなげたい想いがある気がしています。

RiFUKURUselect 京都発!未来をつなぐ商品たちとして引箔の技術を使ったタンブラーを販売しています。気になる方はこちらの商品ページをご確認ください。

毎月28日清水寺内で行われている1000marketにお立ち寄りいただけますと実物をご覧いただけます。

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