今回の日本のモノづくりをご紹介するコラムは、番外編としてアパレルの生産過程の問題に取り組んでいる京都の大学生の方に担当いただきます。
訪れたのは京都市伏見区にある丸編みニット生地への染色やプリントを行う伏見織物加工株式会社。
社長の森田様から直々に染色工程をこだわりや染色への想いを交えながらご説明いただきます。
伏見織物加工株式会社様は1963年創立、染めとプリントを一貫して行うことができ、この技術を有するものは国内でも数少ないとされており、高い技術を誇っておられます。
人材を育てる「人磨き」に力を入れておられる森田社長は、新しい付加価値を持った製品を作り出すことに熱い思いを持たれています。
染色工程のご紹介
■開反(かいたん)
入荷された丸編みニット生地をフラットなフラットな布の状態にする作業です。
生地の目を整えるためには正確に生地を開く必要があり、この作業もまた熟練された職人の技
術とともに行われています。生地の素材に合わせて開反するタイミングを変えているため、染色
後に行うこともあるそうです。
■毛羽焼き
この作業は生地の表面にある毛羽を焼いて取り除き、その表面を平滑にする作業です。
ガスの炎や電熱で、生地を移動させながら表面にある毛羽を焼いていきます。
■染色
高圧の染色機で生地と染色液を同じ方向に流しながら生地を染色します。
生地の吸い上げられ方により生地の仕上がりは変わるため、適宜生地の風合いを考慮しながら
染色しているそうです。
生地の素材によって同じ時間と機械でも風合いが異なるため、染色時間や染料、また染色機の
種類を変えながら事前に実験し、希望の風合いに仕上げていきます。
また伏見織物加工株式会社様では環境への負荷を考慮するため、より少ない水量で染色できる韓国製の染色機も取り入れられています。通常の染色機は生地1kgに対し水120kg〜150kg
を必要としますが、この染色機は1kgあたり40kgの水量で染めることが可能だということです。
■巻き上げと仕上げ加工
染色後は脱水と乾燥を行い、そして巻き上げを行います。
巻き上げ後、オーダーに合わせ特殊加工を施します。
そしてテンターと呼ばれる幅出機を使い生地の両耳を引っ張り、決められた幅に仕上げます。
■検品
一度巻き上げた生地を目視で確認しながら、一つ一つ丁寧に検品します。
縮みやしわ、品質などがないか入念に最終チェックします。
こうして布地が染め上げられ、完成した生地はまた次のお洋服を作る工程へと進みます。
伏見織物加工株式会社様が行う全ての工程には必ず熟練された技や、長い年月を経て得たノ
ウハウが盛り込まれていました。
見学を終えて
工場見学前には想像がつかなかったほど布地の染色には多くの工程が踏まれていることを知りました。
伏見織物加工株式会社様が行う全ての工程すべてに熟練された技や、長い年月を経て得たノ
ウハウが盛り込まれています。
近年デジタル化が進み、大量の物があふれている現在の生活、は生産者の顔が見えづらい、わかりづらいように感じていました。でも、そこには生産者と技術者の手があり、製品に対する技と想いが込められていることを知りました。
何気なく手に取る一枚のお洋服も、どこかの誰かがお洋服をデザインし、生地を織り、染色して、裁断して、縫製して。
そして私たちの手元に届き、何気ない日常を彩る一枚として共に生活を送っています。
今着ている一枚も、どこかで誰かの想いが込められています。
生産の背景を知ることは、お洋服の価値を正しく判断することであり、今あるお洋服を大切に着ることが私たちの責任であるように感じました。